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2024年5月22日
動画制作の現場は、これまで手作業による編集やナレーション、音楽の選定など、多くの人手を必要とするプロセスが中心でした。
しかし、近年Chat-GPTや画像生成AIなどのAI技術の飛躍的な進歩は目まぐるしいものがあり、これにより動画制作の方法も劇的に変わろうとしています。
本コラムでは、AI技術が動画制作に与える影響と、それに伴う産業の変革について探ります。また、これからの動画制作会社がどのようにしてAI技術と共存し、競争力を維持するかについても考察します。
目次
AIによる自動編集技術の発展は、動画制作の効率化に大きな影響を与えつつあります。
これまで膨大な時間を要していた編集作業も、AIを活用することで瞬時に行える技術が次々に発表されています。
今後、特に、テンプレート化された量産型の動画や、人間が思いもよらない個性的な編集を施したクリエイティブな動画も、AIのアルゴリズムによりスムーズに生成できる時代が近づいています。これにより、編集者はより高度なクリエイティブ業務に集中する事ができるようになってきます。
また、自動生成AIによる動画素材の生成も今後さらに加速していきます。代表的な例としてOpenAIが発表した「Sora」があります。
実写映像と区別がつかないような高精細な映像をテキストによる指示から作り上げる技術が発表されました。Adobe Premiere Proなどの製品に導入されるという事で、誰でも手軽に高いクオリティの映像を使用できるようになります。
AIによる音声合成技術の進化は、ナレーションの多様化を実現しています。
テキストベースで多様な声色のナレーションを生成できるため、プロのナレーターに依頼するよりも、コスト削減とナレーション録りの効率化が図れるようになってきました。また、リアルタイムでの音声生成が可能となり、クライアントの要望に迅速に対応して修正することもできるようになります。
日本語音声でお高品質に音声合成が出来るAI音声合成ソフトとしては、「CoeFont」などがあります。著名人やプロのナレーターの声や自身のクローンを作って喋らせることも可能なソフトが今後もどんどん出てくる可能性があります。
動画の雰囲気に合ったBGMを迅速に提供する、AIによるBGM自動生成技術が注目されています。
動画の内容やテーマ、動画の雰囲気をAIに伝える事で、最適な音楽を生成し、個々の動画に独自のクリエイティブを提供できます。
オリジナリティ溢れるBGMの制作が容易になり、動画の完成度をより高めることができるようになります。
楽曲の生成AIとしては「Suno AI」や「SOUNDRAW」など、かなり高品質な生成AIが発表されており、単純なBGMから歌詞付きのものまで様々な楽曲を生成する事が出るようになりました。
AIによるイラスト自動生成と動画生成ツールの連携により、アニメーション制作を簡単に行う事が出来るようになってきました。
従来の手作業に比べて、時間とコストを大幅に削減することができ、より多くのクリエイティブな作品を短時間で制作することが可能になります。
その種類は様々で、実写の映像をアニメーション化するモノや、1枚の画像からアニメーションを制作するモノ、アニメーションのコマを補完するモノなどがあります。
この技術は、今後、特に短編アニメや広告動画などの分野で大きな影響を与えていくと考えられています。
AIの分析能力により、各媒体ごとに視聴者の目を引きやすい動画を判断し、最適化された動画を数分で生成することが可能になっていきます。
視聴者の趣味嗜好や行動パターンをデータとして解析し、その結果に基づいて、テロップの位置や、動画の尺、フォントやエフェクトの指定など、様々な要素を組み合わせた動画を制作することで、効果的なマーケティングを実現できるようになっていきます。
これにより、視聴者の関心を引きやすいコンテンツを提供することができ、動画の再生回数やエンゲージメントを向上させることがAIの力で可能となっていきます。
AIモデルの起用により、広告業界におけるタレントの利用事情も変化しています。
従来、タレントを起用した広告は、そのタレントの人気やイメージに依存していましたが、タレントの不祥事によるリスクも伴うという事例が多数見られるようになりました。
AIモデルならば、このようなリスクは存在せず、ブランドのイメージを損なう心配が無い為、作品によっては、AIモデルやAIアバターを使ったCMが今後作られていくと思われます。
また、AIモデルの使用はコスト削減にもつながり、予算をより効果的に活用することが可能というメリットもあります。
さらに、AIモデルは常に一貫したパフォーマンスを提供し、ブランドのメッセージを長期間の間、確実に伝えることができる存在として期待できます。
AIモデルを使用した伊藤園のCMは話題になりました。
AI技術の進展に伴い、動画制作会社の立ち位置や技術の向上の方向性も変わっていくと考えられます。今後、動画制作会社が生き残っていく為には、以下のような戦略を取ることで競争力を維持することができると思います。
今後、AIの活用は必要不可欠になっていくと思われます。それを前提に、効率化と品質向上を両立させる方法を模索していくのが動画制作会社の生存戦略の一つになると考えます。AIによる自動化を導入しつつ、人間のクリエイティブな力を活かすハイブリッドなアプローチを考えていく必要があります。
AIが得意とする分野と、人間が得意とする分野を明確に分けることが重要だと考えています。
AIによる創造性もどんどん進化していますが、人間にしか出来ない真実味の部分が今後のテーマになっていくと思います。AIはあくまでツールとして、補助的な役割を果たします。
個々のクリエーターは、独自の価値観で作品をまとめ上げる役割を追求していきます。
AIが補完できない現実世界の美しさを追求するために、高精細な映像を撮影する技術の向上は不可欠です。
実写の映像を撮るという部分は、唯一AIには出来ない技術です。
その為、最新のカメラ技術の導入や、撮影技術の研鑽が今後クリエーターの差を作っていくと思われます。
高解像度映像やHDR(ハイダイナミックレンジ)技術を駆使することで、視覚的に卓越した映像美を実現し、他社との差別化を図ります。
AI技術の導入を前提とした新しいビジネスモデルを検討し、競争力を高めることも生存戦略の一つです。
例えば、AIを活用した新たな動画制作サービスの提供や、データ分析を活用したマーケティング戦略の構築などのサービスは今後アイデア次第でいくらでも作っていけます。
AI技術の進展により、小規模事業者でもクリエイティブで高品質な動画を制作できる時代が到来しています。
これまで高額なコストや専門知識が必要とされていた動画制作が、AIの力を借りることでより手軽に実現可能となりました。
この変革は、小規模事業者にとって大きなチャンスであり、動画制作の新たな可能性を開くものです。
AIによる自動化により、人件費や制作コストが削減され、より多くのプロジェクトに予算を回せるようになります。
AIの高速処理により、短期間で高品質な動画を制作することが可能となり、マーケットの変化に素早く対応できるようになっていきます。
AIの支援を受けることで、クリエイターはより創造的な部分に集中でき、新しいアイデアや表現方法を探求することができるようになると考えられます。
小規模事業者がAI技術を積極的に導入することで、これまで以上に競争力を高めることができ、動画制作業界全体の発展にも寄与することが期待されます。
AI技術の進化は、動画制作の未来を大きく変える可能性を秘めています。
自動編集、音声合成、BGM生成、アニメーション制作、視聴者分析など、AIの導入による効率化と高度化は、今後ますます進んでいくでしょう。
動画制作会社は、これらの技術を活用しつつ、人間のクリエイティブな価値を最大限に引き出す戦略を立てることで、競争力を維持し続けることが求められます。